山崎豊子 著 新潮社
1974年 740円
戦災を逃れた疎開先の屋敷には秘められた事情があるようだ。私は心にわだかまりをかかえたまま終戦を迎える。その後、屋敷の女主人の人生を、彼女の幼いころからのそば仕えの女中が私に語りはじめるが、それは閨秀歌人としての、旧家の総領娘としての個人の自由などままならぬ当時ゆえのあまりにもドラマティックな展開であった。って夢中で読み込んでしまった。情景・人物の描写が読み続けるのが辛くなるほど臨場感あふれて感情移入せずにはいられない。物語の素材自体が秀逸ではあるのだが、こんなにも切なく描ききるなんて。山崎先生!ハマります。
松岡正剛 著 春秋社
1700円2006年
日本は孤立しているとかアメリカしか見ていないという報道をよく見聞きします。この本は漠然とそうかなという程度の認識しかなかった私にはまさしく目から鱗でした。人間と文化のかかわりを古代から近代さらに日本と世界という視点から実にわかりやすい文章で書かれている。楽しく読み進みながらあちこちでなるほどと唸るところが随所にある。そしていかに今の日本人が日本の歴史文化をわかっていないかを思い知らされた一冊でもあった。

久坂部 羊 著 幻冬舎
2004年 1890円
医療過誤による裁判が縦軸で、横軸はは高齢者の安楽死問題。どちらも現代の日本がかかえる大きな問題だ。老人が国の財政を破綻させるから「老人を安楽死させよう」という国家プロジェクトが進められるというプロットは、架空とは思えないリアリティがある。誰もが夢見る長寿と引き換えに、私たちは自然に死ねない不幸を背負い込んでしまったのだろうか。