北尾 トロ 著 鉄人社
2000年 1299円(税込)
ちょっとした勇気を出して、日頃から気になっていることを実行する。というのがテーマのエッセイ?がまとめられている。全くの他人を誘って一杯やるとか、鼻毛が出ている人に注意を促すとか、ライブハウスで詩の朗読会の発表者になるとか。相手に気を使いすぎだよっていう、人柄がにじみでている章はちょっとイタイ。それをのり越えて、喜びにまでたどり着いた試みは清々しささえも漂い、スカッとするよ。
東海林 智 著 毎日新聞社
1500円 2008年
リーマンショック後の世界は金融恐慌と言っても過言ではない程の経済的打撃を受け、今も経済危機の真っ只中にある。日本でも大企業がこぞって非正規雇用の人たちを解雇した。「職を失う=住むところを失う」という構図である。住むところを失うということは人間として生きていく上での最後の砦を奪われる事だと思う。また、非正規雇用と言う形態では貧困のまま過酷な労働条件を強いられる事も多くある。「貧困」が拡大の一途をたどる中で反貧困運動が広がりを見せている事は心強く思える。人らしい当たり前の生活を取り戻すにはどうしたらいいのだろうか。他人事ではなく自分のこととして考えたいと思う。

秋田文庫 手塚 治虫 著
1993年 590円
図書館でブラックジャックと出会えるとは思いませんでした。マンガも貸出してるなんてうれしいですねぇ。久々に読み返してみると記憶の中の「ブラックジャック」とかなりずれていて驚きました。人情味溢れるお医者さんで、いわば赤ひげ先生。かっこよすぎです。
沈まぬ太陽(一)〜(五)山崎 豊子著 新潮文庫
2001〜2002年 本体590〜667円
実在の航空会社をめぐる人事労務や経営問題、多くの人命を失った墜落事故の真相などを、著者が5年の歳月をかけて取材し、小説として再構築したもの。現在経営再建中の同社だが、政治とも結びついた巨大企業の闇に果たしてメスが入る日は来るのかという気になる。10年近く過酷な海外勤務をさせられてもこの会社を辞めなかった主人公のモデルの男性に敬服する。
前作「遺品整理やは見た」のインパクトよりはソフトタッチ。それでも、遺品が様々な人の生きざまと死にざまをものがたっていることに、あいかわらず悲しさよりも恐ろしさを感じる。物はありすぎてもなさすぎてもナニカを語ってしまう。遺される立場よりも、遺す立場で読むと、現状を何とかしておかねばと焦燥感にさいなまれる。

扶桑社文庫 久住昌之 原作 谷口ジロー 作画
2000年 600円
「孤独のグルメ」という題の通り、普通のサラリーマンが仕事の合間に一人で摂る食事を描いた作品。食べるものも回転寿司だったり、焼き肉だったりと身近なものばかり。店の雰囲気やお客の会話など、ごくありふれた日常を上手く切り取っていて、なぜか懐かしく感じる。この淡々とした普通の感じが魅力なんだろうな。
NHKワーキングプア取材班 編
ポプラ社 1200円 2008年
日本は格差の少ない均一化された社会のようにずっと言われてきた。私自身日本の貧困率がこんなに高いとは恥ずかしながら全く知らなかった。少子高齢化が急速に進む中、ワーキングプアは次世代の日本の担い手である多くの若者をも巻き込み日本中に拡大している。そして、そこから派生する様々な問題。しかしこれらの問題に関しては日本の国民も政府も危機意識が薄い気がしてならない。海外の取材を読んでいて貧困・非正規労働の問題は相当以前からすでに顕在化していて解決に向けての取り組みが様々なされていることを知った。私はまずは実態を知り、自分の身にも起こることとして考えることから始めようと思う。

週末のフール伊坂 幸太郎 著 集英社文庫
2009年 本体629円
地球滅亡直前のパニックという設定は今まで何度も小説や映画で描かれてきたが、この小説はやや趣が異なっている。8年後に小惑星が衝突して地球が滅亡すると予告されてから5年後という設定だ。当初のパニックが一定収まった後、生き残った人々が3年後の地球滅亡を受け入れつついかに生きていくか。諦念、自暴自棄、喪失感、許容、わずかな希望など、この極限の状況において人間が向き合う感情がリアルに描かれている。あと3年ですべて終わることがわかっている時に、恋愛したり、黙々と目標に向かって努力したり、出産したりなんて、自分ならできるだろうかと考えさせられる。