第85回(2009年5月)

なみのひとなみのいとなみ

宮田 珠己 著 朝日新聞社
2008年 1500円 

 宮田作品ではあるが、旅ものではない。エッセイ集らしいが、フツーのおっさんの日常とその考察を徒然なるままにってかんじ。その考察が愉快、笑かす。笑いのツボおさえっぱなし。タイトルではナミノヒトなんて言ってるけどご謙遜ね。文章展開とか、思考回路とか、ただものじゃないよね。思わずふきだすから人前で読むとキケン。

 

悪女について

有吉 佐和子 著 新潮文庫
1983年 740円

 ある女性実業家が、転落死をした。この死は、自殺なのかそれとも他殺なのか…。友人・元夫・愛人など、この女性を取り巻く27人が自分の知っている女性実業家について語っていく。ある人は世にも珍しい善人だと褒め、またある人は死んで当然だと罵る。本当はいったいどんな女性だったのか…。人間の多面性を鋭く描写した文句なく面白い作品です。

 

翼 cry for the moon

村山 由加 著 集英社文庫
2002年 762円(本体)

 ニューヨークの大学院で学ぶ主人公「真冬」は、いじめや母からの虐待を受けて育ったため、「愛」を知らずむしろ恐れてさえいた。ついに愛する人を手に入れたものの、一瞬にして失ってしまう。その後訪れた夫の故郷アリゾナでの貴重な体験を経て、凍えていた心が徐々に解き放たれていく。長編だが登場人物が魅力的で、早く先を読みたいという気にさせる展開。文章もシンプルかつ洗練されておりストレスなく読める。
しかし、なんといっても一番のオススメは、ナヴァホの古老が主人公に語った言葉。至言だらけで、何度も繰り返し読んで味わいたいくらい。


美女と竹林

森見 登美彦 著 光文社
2008年 1600円
 
 またしても妄想である。サラリーマンと売れっ子作家の二足の草鞋がそうさせるのか、妄想に逃げ込む僻があるのか。妄想が大半のはずなのに、この作品に描かれている登美彦氏のわらわらと忙しそうな毎日と、竹林に傾ける(逃避する?)愛情かげんに、“ハリアイノある毎日で良いなあ”なんて感じてしまう。今年のわがやのタケノコ堀が待ちきれんくらい楽しみになっています。平凡な私の毎日さえも楽しいことのように感じさせてくれる、そんな妄想作家にはまってしまったようです。

 

子どもたちは象をどう量ったのか? -寺子屋の楽しい勉強法-

西田 知己 著 柏書房
2008年 1500円(本体)

 寺子屋に通っていた江戸時代の子どもたちは、どんなことをどんな風に勉強していたのか興味深い。今の小学校のように大人数の詰め込みではなく、少人数の個別学習で内容も子どもたちが興味を持ちそうなこと役に立ちそうなことが中心だった。国語には算数や時事的な要素もあり、縦割り学習とは程遠い。一例が江戸時代に何頭もやってきた象の体重の量り方を子どもたちに考えさせるもの。あなたならどうやって量りますか。


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