第83回(2009年1月)

怪獣記

高野秀行 著 講談社
2007年 1500円+税

 またまた未知生物ジャノワールを探しにでかけた高野氏です。CNNで放映されたくらいポピュラーなはずのジャノワールが、目的地トルコではすでに“終わった”ことにされていて、なんだかなあという流れから、旅はますます充実感が増してきます。民族問題あり、人々とのふれあいあり。未知生物さがし、とかなんとかいっちゃって、結局旅そのものをも楽しんでるんだよね。私もヘンテコ旅したい。


フェルマーの最終定理

サイモン・シン 著 青木 薫 訳 新潮社
2006年 781円(本体)

 350年もの間、何人もの数学者がことごとく敗退していったフェルマーの最終定理がついに証明された! この本は、ピタゴラスから始まって数学の発展を辿ることにより、フェルマーの最終定理が『どのような方法によって』解明されたか素人にもわかるように書かれている。数学って本当に美しくて魅力的だ。この本は昔、数学が好きだった気持ちを思い出させてくれた。
ちなみに、「フェルマーの最終定理」無きあとの次なる魅力的なターゲットは「ゴールドバッハの問題」。『6以上の偶数はすべて2つの素数の和で表わせる』だそうです。


てのひら一文

築山 桂 著 徳間文庫
2008年 571円(本体)

 時は江戸時代。大坂の天満で寺子屋を営む三姉妹。そこに通ってくる人々を巡って起こる事件をテンポよく描いている。著者の作品はいずれも個性的で生き生きした女性が主人公で、読んでいて気持ちいい。歴史研究者だけあって、史実に基づく描写もさすが。初期の作品「禁書売り」が2009年1月からNHKでドラマ放映されるとか。それも楽しみ。


インド刺繍布のきらめき−バシンコレクションに見る手仕事の世界

三尾 稔編 金谷 美和編 中谷 純江編 昭和堂
2008年 2310円

 インドの布は実に色彩鮮やかで種類の豊富さにも驚かされる。サリーだけを見ても色・模様・刺繍それぞれに驚くほどのバリエーションがある。特にインド刺繍布は鮮やかな色の布に手仕事の刺繍が施されていて芸術品としてもすばらしいと思う。その手刺繍ははるか昔から日常生活を通して伝承された来たインド女性の文化であり生活そのものである。美しい布を通してインドの生活(特に女性の生活)を知るには格好の一冊。


図書館戦争

有川 浩 著 メディアワークス
2006年 1600円+税

 図書館業界では常識で、実在する“図書館の自由に関する宣言”に触発された著者が、「じゃあ、検閲が正当化されたら、その宣言との対立具合はどんなんもんさ」と妄想に妄想を膨らませて書いたのがこの小説。著者曰く、大人のライトノベルだそうで、確かにオタク感が否めない恋愛小説を読むような感も織り交ぜつつの、なかなかどうして、図書館業界をうならせる(←当館比)物語構成。このあと、図書館内乱 図書館危機 図書館革命と続いて、外伝まで出ているけど、ぐいぐい読ませるよ。


報道被害

梓澤 和幸 著 岩波書店
2007年 740円

 毎日様々な事件がメディアをとおして報道されています。そして被害者や遺族にマイクが向けられている姿も毎日のように目にします。この本を読んで特に犯人視されたり、間違った報道をされたりした報道被害者が名誉回復することの難しさを思うと他人事ではない空恐ろしさを覚えます。「報道の自由」と「個人の人権」のどちらも守られる事の難しさを改めて実感しました。

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