第82回(2008年12月)

悶絶スパイラル

三浦しをん 著 太田出版
2008年 1400円+税 

 直木賞作家の三浦しをんがその日常を赤裸々に綴ったエッセイ集。ビックリするほどありのまま、そんでもって超普通の人。ファミレスで隣席の会話を盗み聞き、マンションのゴミ捨て場でマナーを嘆き、デジカメの記録媒体の要領をいまいち理解できずにいる。それなのに文章からにじみ出るひとくせもふたくせもある個性。小説で作家三浦のファンになり、エッセイで個人三浦のファンになりましたよ。


罪と罰

ドストエフスキー 著 新潮文庫
1987年 上巻629円 下巻667円(本体)

 いつか読もうと思いながら遠い存在だったドストエフスキーだが、ブームだと聞いてようやく手に取った。読んでみるとあまりの面白さにアッと言う間に読了。「罪と罰」って推理小説だったとは知りませんでした。犯罪者の心理が手に取るようにわかって怖くなります。とっつきにくいな、と思っている方、ぜひ一度読んでみてください。あっという間に読めて名著を読んだ充実感が味わえます。


魂の旅 地球交響曲第三番

龍村 仁 著 角川ソフィア文庫
2007年 705円(本体)

 映画監督である著者が、その作品「地球交響曲第三番」の撮影をめぐって出会った人々や出来事を綴っている。撮影開始直前の主人公「星野道夫」の死からはじまり、様々な不思議な体験や偶然の一致を見る中で、著者は「魂」の存在を感じていく。洗脳や布教の意図など一切なく事実を淡々と描いているのだが、かえって説得力がある。ふだん物質文明の中で「神も仏もありませぬ」という感覚で生きている自分でさえ、妙に納得した。映画もぜひ観たい。


とりあえず1ヵ月海外リタイア暮らし−16万円おすすめアジア

立道 和子著 河出書房新社
2007年 1500円

 とりあえず一ヵ月というフレーズに惹かれました。リタイア後は海外でとは思いつつ様々事情があって踏み切れない人も多いはず。そんな多くの人たちにお勧めの一冊です。著者が自ら選んだアジアベスト3(ペナン・チェンマイ・セブ)に一ヵ月実際暮らして、3都市の衣食住等を比較している。読み物としても面白いし、自分が海外暮らしを考えているなら具体的なアドバイスが随所にあってさらに興味津々。自分ならどこで1ヶ月どこで暮らそうかなんて考えながら読むと実に楽しいです。

 

萬斎でござる

野村萬斎 著
朝日文庫 2001年 本体560円

 「狂言」の世界が内から語られていて、興味深い1冊。今や多方面で活躍する著者だが、映画やTVドラマ、現代演劇といった全く別の世界での挑戦は、そのたびに「狂言師」としての「野村萬斎」を強固にしていくようだ。長い時間かけて洗練され、代々受け継がれてきた「型」にいかにエネルギーを注入するか、言葉や表情、装置に頼らず人間のおかしみや悲しみをいかに伝えるか−この人がどこに行くのか見届けたい、そんな気持ちにさせられる。

 


インド怪人紀行

ゲッツ板谷 著 スターツ出版
2000年 1200円+税

 少し前の本だけど、やっぱりおもしろい。ゲッツと、鴨ちゃんと、ゲッツのかわいがっている後輩?二人の合計4人、インドでやりたい放題。はちゃめちゃやなことばかりしてそこのところはもちろん愉快だけど、ゲッツは旅行中、人を見ている。同行者の各人を見つめ、それぞれの相性や、物の見方考え方に心をめぐらせる。そこが“読ませる”ミナモトだな。やっていることは不健康極まりなく、ヤンキーででぶっちょ、でもいやな感じがしないのは周りにいる人たちとじっくり付き合っていることが文章からあふれているからかしら。


動物農場

ジョージ・オーウェル 著
角川文庫 1972年 本体476円

 人間に「酷使」されていた動物たちが反乱を起こし、豚をリーダーとして動物による農場運営が始まる。動物たち全てにとっての楽園がそこに待っていたはずだったが、物語はあれよあれよという間に恐ろしい結末に進んでいく。童話仕立てだが、内容は書かれた当時の社会に対する痛烈な風刺。今読んでも古さを感じさせないのは、人間の怖さや危うさの本質が見事に表現されているからだろう。55版となるのも頷ける。


彼らの流儀

沢木耕太郎 著 新潮文庫

 短編小説のようなエッセーのような不思議な雰囲気を持つこの本を読んでいると、「ずっと読んでいたいからもう読みたくない…」そんな気持ちになった。沢木さんの淡々とした筆がちょっとした話を映画のひとコマのように仕上げていて、上質の文章を読む喜びを味わせてくれる。


アメリカ

藤原 新也 著 集英社文庫
1995年 752円(本体)

 今から20年ほども前に著者がモーターホームで7ヶ月間アメリカを旅した記録。アメリカを何度か訪れ、いずれはモーターホームで旅をしてみたいと思っていた私にしてみれば「大先輩〜!」って感じです。延々と続くフリーウェイを走っているとき、極まれに現れる対向車やガソリンスタンドの看板が妙に嬉しかったり、っていう感覚には共感した。アメリカの文化や人を著者なりの視点で分析しているのが興味深い。特にマクドナルドの発祥や存在意義を考察しているくだりは、著者ならでは。


打ちのめされるようなすごい本

米原 万理著 文芸春秋
2006年 2286円

 久しぶりに立ち寄った古本屋でこの本と出合った。第一部の私の読書日記は分野を問わない膨大な読書量に裏打ちされた著者の文章が読み手の私を笑わせ楽しませ励ましてくれる。自分の興味のあるところから読むこともできるし、取り上げられている作品から読んでもおもしろい。何度も読み返すのが楽しみになる。読書日記の最後は著者の闘病記だが最後まで冷静に客観的に書かれているのには驚かされる。第二部は1995年から2006年までの書評集。

 


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