第80回(2008年7月)

ワンダー・ドッグ

竹内 真 著 新潮社
2008年 1400円  

 とある高校のワンダーフォーゲル部と、そこで飼われることになった犬の10年間のおはなし。1980年代でもワンゲル部って風前の灯だったけど、この小説は1990年代が舞台。いけてなかったワンゲル部が一匹の犬がきっかけでめちゃ盛り上がって、人と人の繋がりを作っていくの。心がきゅんってなるのよ。青春だー!


僕には数字が風景に見える

D. タメット (著) 古屋 美登里 (翻訳)
講談社 2007年6月 ¥ 1,785 (税込)

 著者のタメットさんは、映画「レインマン」で有名になったサヴァン症候群で、数字と言語に関して驚異の能力を持っている。私たちは、数字は単に数字、無味乾燥なものにしか思えないが、彼には数字が風景に見えるらしい。暖かい数字、冷たい数字、そして風景を伴った数字など、彼に見える数字は私たちとは全く異なる。天才の頭脳というのは、普通の人より回転が速いだけかと思っていたら、CPU自体が別モノ。アスペルガー症候群も併せ持つ著者の控え目で温かい世界がいい。

 

日本現代文学全集 35 「蒼氓」

石川 達三著 講談社
1976年

 今年はブラジル移民百年にあたり、新聞やメディアで様々な特集が組まれている。この小説は70年以上前に移民してゆく人たちの乗船一週間前からブラジルに着くまでの様子が克明に描かれている。私が何より心に残ったのは日本の農村の圧倒的な貧しさゆえ移民せざるをえなかった多くの人々の姿でした。もちろん現在でも貧しさゆえに自国で生活できない人々は世界のあちこちの存在している。かつて日本も移民を出さざるを得ない国であったこと、そんな中で移民した人々がいたという現実を忘れてはいけないと思った



日本の森と木の職人

西川 栄明 著 ダイヤモンド・ビッグ社
2007年 1500円(本体)

 東日本9カ所の森林と木工職人を訪ねて、インタビューしたもの。文章は素人っぽくイマイチだが、登場する職人たちは超一級。その中の至極の言葉が、「いいものを作るのは当たり前。いかに早く、いいものを作るか。これが職人だ」。もの凄くかっこいい。才能があれば、職人になりたかったー!

 

かわいい子には旅をさせるな

鷺沢 萌 著 角川文庫
2008年 本体476円

 2004年に亡くなった鷺沢さんのエッセイ集。題名から連想される旅先での話より、日常のちょっとした時に人が発する“言葉”をめぐる話がいい。エッセイというのは、作家の興味関心がどこにあるか、また、それをどんな風に切り取って文章にするかで、その人の個性や感性が垣間見えて面白い。こんな文章を書ける鷺沢さんに、もっと書いて欲しかったと思う。

 

中国汚染−「公害大陸」の環境報告 

相川 泰著 ソフトバンク
2008年 730円

 北京オリンピックを控えた中国では大気汚染が深刻な問題としてマスコミ等で取り上げられている。さらに「水」の汚染問題は深刻だと思った。もちろん日本でも水質汚染は深刻な問題。この本を読んで中国の公害は近年の経済発展が引き起こしたと思われがちだが実はもっと以前からの根深い問題であることを知った。さらに現在、中国の急速な経済発展で日本経済(企業)が潤っている現実があるので、日本が持つ公害を減らすノウハウがあれば積極的に提供する事が今必要なことだと感じた。

 

怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道

高野 秀行 著 集英社
2007年 600円 

 未確認生物捜索をライフワーク(?)としている著者が、ネット上で見つけた怪魚ウモッカのサイト。これがきっかけでインドへと向かうのだが、思わぬ展開にやられた〜って感想。インドへ出発するまでの準備期間、未確認生物への情熱、インドでの顛末一気にぐいぐい読ませます、忘れていたアツイ心を呼び覚ましてくれるはず

 

仕事と年齢にとらわれないイギリスの常識

井形 慶子 著 新潮文庫
2006年 本体476円

 誰しもに訪れる“老い”。日本では否定的に捉えられがちだが、著者はイギリスで、年齢に関係なく、日々の生活を楽しみ、新たな学びや人との出会いに心はずませる多くの人々に出会ったという。この本を読むと、「豊かさ」とは何かを考えさせられるとともに、こうした生活を可能にする土台に、成熟した個人主義と助け合いの精神があることに気づく。著者が取材で出会ったというイギリスの高齢者の「年をとった。だから私は自由なの」という言葉が印象的。


こちら救命センター〜病棟こぼれ話

浜辺 祐一 著 集英社文庫
450円(税込)

 「救命センターに予約して入院する人はいない。ここに運ばれてくるのは、どんな時でも突然である」浜辺医師のこの言葉から、救命センターに入院してくる患者さんの過酷さ、医者や看護師の辛さが伝わってくる。でもこの本は、浜辺医師の視点のユニークさで、お涙頂戴本になっていない。それにしても救命センターのお仕事は大変ですね。皆様、どうもありがとうございます。

 


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