第45回(2003年3月)

深夜特急(全3巻)

沢木 耕太郎著 新潮社
1992年 1400円

 ユーラシア大陸をバスで走破できるか。そんな友人との賭けから始まった沢木青年の旅。旅のロマンと青春がぎっしりつまっていて、バックパッカーのバイブルと言っても過言ではないのです。特に3巻、二十代で読んだ時には重苦しく読みづらい感があったが、三十代になって読み返してみると、沢木青年の深〜いところでの成長が感じられてしみじみ…いい旅したよあんた。

 

神々の山嶺(カミガミノイタダキ)上下

夢枕 獏著 集英社文庫
2000年 上巻724円 下巻800円

 すでに50歳を目前にした孤高の天才クライマー羽生がエヴェレスト単独登頂を狙っていることを偶然知ったカメラマン深町。深町は羽生を追いながら、自分の人生における登山の意味を考えていく。登場人物はそれぞれ魅力的に描かれているんだけど、とにかくマッチョなんだよなー。しかし、エヴェレスト登山をテーマにした小説としてはトップレベルのおもしろさ

  

チベットの夜空の下で眠りたい

長岡 洋幸著 竹内書店新社
2002年 2000円

 チベットには興味ある人は多いと思うけれど、実際には、厳しい自然、政治的な問題(中国からの独立運動)等があって、ちょっと遊びになんて簡単には行けませんよね。チベットには、私たちが日本人にいては経験することのない生き方があって、それを自分からチベット世界に入ってゆくことで知ることができる。写真のチベットの人の表情もも興味深く思わず見入ってしいます。

 

宴のあと

三島由紀夫 新潮文庫
1969年 本体400円

 かおりの名作シリーズ第2弾。お恥ずかしながら、三島由紀夫を読んだのは2冊目。今なら「ワイドショーねた」といわれるような、当時の政治家の私生活を赤裸々につづった小説です。「プライバシー裁判」にまで発展したことでさらに有名になりました。いわゆる下世話なねたをここまで書き上げた、三島の筆のすばらしさに感嘆する。こういう小説を読むと、現代の小説はちょっと物足りないなぁ。名作シリーズ恐るべし。

 

ハイブリッド・ウーマン

遥 洋子著 講談社
2003年 1500円(税別)

 「愛されるだけの女ではなく、戦うだけの女でもない。それらのもつ限界を超えた女(中略)をハイブリッド・ウーマンと名づけたい」という帯で興味をそそられた。確かに、媚びるのも戦うのも疲れる。ストレスを感じずに働く方法はないかしらとは思っていた。そのヒントが得られるか?と期待して読んだ。体験談はおもしろく共感できた。ただ、肝心の処世術は、美貌も能力も人並み以上に備わっている人向けかな。

 

ベター・ハーフ

唯川 恵著 集英社
2000年 1700円

 私と同じくらいの年の主婦、永遠子が主人公。バブルに沸いた時代に就職し、永遠の幸せを確信して結婚する。でも本当は結婚は日々の生活のつみかさね。その後のバブル崩壊で味わった日本の苦しみとダブらせて永遠子の成長を描いている。あー、しかし結婚生活というのは、客観的にみると苦しみの連続なのね。それでもいつか配偶者のことをベター・ハーフと思えたら幸せだよね。たとえベスト・ハーフではなかったとしても。

 

霊験お初捕物控 震える岩

宮部 みゆき著 講談社文庫
1997年 本体695円

 江戸時代の幕臣、根岸肥前守鎮衛という人が公務の合間に「奇談、又人の為に成るべき事」を書き集めた「耳袋」。本書は、この「耳袋」の題材をモチーフとして書かれたもので、お初という超能力を持つ主人公が不思議な事件を次々と解決していく筋立てである。現代小説では時として場面描写で饒舌すぎると思われる著者の筆遣いだが、本書をはじめとする「時代もの」では、それが為に江戸の庶民の生活をいきいきと描写することに成功しており、一気に読ませる勢いがある。骨休めをしたい時におススメ。

 

たいせつなこと

マーガレット・ワイズ・ブラウン さく  レナード・ワイスガード え
うちだ ややこ やく  フレーベル館
2001年 1200円

 絵本だからといって侮ってはいけません。これは哲学書です。そして訳が秀逸!心の底にシンと沈んでやがて糧となる、そんなコトバたちが心地よい。この絵本は、こどもから大人まで、各世代で味わいかたがそれぞれにあるのだろうな。個人的には、お疲れモードの大人におすすめしたい。

 

イスラムの誘惑

新潮社 2001年 1800円

 イスラムと聞けば、アルカイダやイラク問題などといった政治問題や宗教紛争などが頭に浮かんできます。逆に文化・民族・生活習慣などはほとんど知らない人も多いんじゃないかと思います。中東を旅する人向けに書かれた本ですが、それぞれの国のもつ歴史や生活習慣などが美しい風景写真とともに楽しめて、イスラム世界を知る入門書としてお勧めです。もちろん旅の情報もあって、これから行きたいと思っている人には役立つ一冊です。

 

紫紺のつばめ 髪結い伊三次捕物余話  

宇江佐 真理著 文春文庫
2002年 本体476円

 知らなかったが、本書は以前「髪結い伊三次」というタイトルでテレビドラマ化(主演は中村橋之助さん)もされていたらしい。主人公の伊三次は廻り髪結いの傍ら、同心の小者(内偵)を務めている一本気な男である。著者は40代半ばでデビューした人らしいが、文章に艶があって、伊三次と恋人との関係、人と人の別れや裏切りなど、人生の経験がいい意味で随所に染み込んでいるように思う。くせになる本だ。

 

花の大江戸風俗案内

菊地 ひと美著 ちくま文庫
2002年 本体820円

 「時代小説」を読む、歌舞伎や時代劇を観る、そんな時に必ず出会う江戸時代の様々な風俗や言い回し。髪結い、湯屋、煮売り屋、木戸番、一膳飯屋、季節ごとの行事や人々の衣装や髪型、etc.何となく分かったつもりになっていたもの、気になりながらそのままになっていたものについて、この本は豊富なイラストと分かりやすい文章で説明してくれている。「時代もの」がこれまでの2倍も3倍も楽しめるようになることうけあい!   

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